大判例

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仙台高等裁判所 昭和30年(う)639号 判決

弁護人の控訴趣意第一点及び被告人の控訴趣意第一ないし第十について。

しかし、原判示第二の事実は原判決挙示の証拠によりこれを肯認するに足り、記録を精査しても原判決の右事実認定に過誤あることを疑うべき事由は存しない。即ち、原審証人皆原邦芳同峠正弥の各証言、司法警察員作成の現場採証報告と題する書面及び写真十二葉、被告人の司法警察員に対する昭和三十年八月二十三日附供述調書によれば、皆原邦芳が原判示経緯で泥棒と叫びながら被告人を追跡して原判示アパート裏奥村トメ方附近に到り、被告人との距離が三間位になつた時、被告人は捕まつては大変と思い(一〇三丁表)、物干場にあつた長さ一間半、太さ一寸八分の物干竿を同人めがけて投げつけ、それが当らなかつたので更に長さ一間半、太さ一寸七分の物干竿をとつて槍を構えるようにして相手を突こうとしたので、邦芳がどんなことをされるか判らないと恐れてひるんだところ(七五丁裏七四丁裏)、被告人はその隙に物干竿をすてて逃走したものであることが認められる。右に徴すれば、被告人は逮捕を免れるため相手方の気勢を挫く手段として前記太さ及び長さの物干竿を相手方に投付けたり、それで突こうとしたりしたものであつて、この被告人の行為は相手方の任意の意思の発動を抑圧するに足るべき強制となり得る手段たるものと認めるのが相当であり、刑法第二百三十八条にいう暴行脅迫に該るものというべきである。論旨は原判示八月十二日の長沢明蔵方における窃盗の際はおとなしく家人に逮捕されたことに徴しても、本件の場合も被告人に追跡者の反抗を抑圧するの意思なく、単に防衛的受動的なものに過ぎなかつたものである旨主張するけれども、本件の場合は相手方の反抗を抑圧する意思であつたことは前叙説明に照し自ら明かである。また、論旨は本件程度の暴行を以て準強盗と論ずるならば、窃盗の現行犯又は準現行犯を逮捕する場合はすべてこの程度の抵抗が予期されるので、準強盗となり不当である旨主張するけれども、所論は独自の見解で採用できない。されば、原判決が原判示被告人の所為を準強盗に問擬したのは正当であり、原判決には所論のような事実の誤認や法律適用の誤り等は存しない。論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 細野幸雄 裁判官 岡本二郎)

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